井上孝代
マクロカウンセリングセンター
(MCC目黒)
本センターでは、井上が提唱したマクロカウンセリング理論の枠組みをより一般に拡張し、今日の様々な問題を抱えるクライエント・当事者の方を対象に多様なカウンセリング活動を行うことを目指しています。
◯マクロカウンセリング理論
マクロ・カウンセリングには,3つの理論的な背景があります。
(1)カウンセリングの発達的アプローチ, (2)コミュニティ・カウンセリング, (3)異文化間カウンセリング,の3つです。
カウンセリングにおける治療活動と予防活動 カウンセリング活動を効果的なものとするためには,援助・介入の対象,目的,方法の3点を考慮する必要です。つまり,カウンセリングの対象として,個人,集団,機関・地域社会のどこに援助の焦点をあてるのか,カウンセリングの目的は,治療を中心とするのか,それとも予防や発達に重点を置くのか,カウンセリングの方法として,直接的援助が必要なのか,コンサルテーション,もしくは情報提供が効果的なのか,これら3つの視点からカウンセリング活動をとらえなければなりません。
マクロ・カウンセリングにおけるマクロとは,働きかけのレベルではありません。これはコミュニティ・カウンセリングがコミュニティ全体に働きかける以外にさまざまな方法をもっているのと同じことです。
マクロ・カウンセリンにおける「マイクロ・システム」とは,当事者であるクライエントが直接的に経験する場面の最小単位です。たとえば,留学生の場合には教室や寮,友人関係など直接的な交流とコミュニケーションを媒介とした活動の場面です。あるいはコミュニケーションそのものが目的となっている活動のことでもあります。
「メゾ・システム」とは,マイクロ・システム間の相互の関連を問題にするレベルです。これは,たとえばある生徒の学業不振の問題が,教室内の問題とは限らず,原因が日常の人間関係や家庭生活の問題にある場合を考えると良いでしょう。この観点から援助活動におけるカウンセラーと他の教職員や地域との連携が問題になってきます。
「エクソ・システム」とは、クライエントが所属する組織の方針あるいは,マスコミ報道の取り上げ方というように,クライエント自身はその場面に関わったり,変更を加えることができないが,彼らの経験や思考,行動に影響を与えるのが,エクソ・システムのレベルです。
「マクロ・システム」は 最も大きなシステムであるマクロ・システムとは,本人をとりまく国家や社会,共同体のレベルであり,たとえば日本人の国民性や日本政府の国内・外交政策といったことが問題となるレベルです。
マクロ・カウンセリングは4番目のマクロ・システムだけでなく4つのシステムのすべてのレベルを問題にしたアプローチなのです。その中には当然マイクロ・システムが含まれています。しかし,伝統的なカウンセリング理論が特にマイクロ・システムの枠内でのみ終わりがちであったことに批判がなされるべきだと考えます。
そこでマクロカウンセリングの特徴としては、
(1)治療的・予防的アプローチさらには発達的アプローチへ
(2)「マクロ・カウンセリング」の考え方とカウンセラーの14の役割
①個別カウンセリング、
②心理療法(サイコセラピー)
③関係促進(ファシリテーション)
④専門家組織化(リェゾン/ネットワーク)
⑤集団活動(グループワーク)
⑥仲介・媒介(インターメディエーション)
⑦福祉援助(ケースワーク)
⑧情報提供・助言(アドバイス)
⑨専門家援助(コンサルテーション)
⑩代弁・権利擁護(アドボカシー)
⑪)社会変革(ソーシャル・アクション)
⑫危機介入(クライシス・インターペンション)
⑬調整(コーディネーション)
⑭心理教育(サイコエデュケーション)
(3)社会文化理論・活動理論を基本とするマクロカウンセリング理論
(発達の最近接領域)
(4)異文化間カウンセリングでは言語的媒介によるコミュニケーションだけでなく,「非言語的」技法によるコミュニケーションを重視
(5)クライエントとカウンセラーの発達の相互性